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古代都市ローマの殺人 (ミステリアス・プレス文庫)

古代都市ローマの殺人 (ミステリアス・プレス文庫)

デキウス君てば、女難の相がでてるんじゃないのか。


…などという下世話な感想はさておき、既に10作以上刊行されているジョン・マドックス・ロバーツの本シリーズは、古代ローマを舞台としており、歴史上有名な実在の人物も数多登場するミステリ(でも、どうだろ?ミステリに分類しちゃうよりも、普通に「小説」として、読み物として捉えていいんじゃないの?)。老年に達した主人公の小デキウス・カエキリウス・メテッルス(父親と同名なのだ)が若かりし頃を回想する、という形で書かれているのだが、彼の回顧からは、古代ローマというより近代、あるいはむしろ現代に近い意識もところどころ透けて見えるので、古代ローマ人の心性が凡そどのようなものだったか知らないけれど、なんだかちょっと不思議な気分になった。既に時空の外に老デキウスは身(のみならず、もしかしたら少しばかりその心も)を置いていて、古代ローマ時代精神埒外から自分達がかつて演じたドラマを俯瞰している、とでもいう感じなんで。
ちなみに日本では最初の2作しか訳されていない。なんたること!ハヤカワ、なぜ続きを出さないのだ?なんか版権とかで揉めたとか?


いやー、しかしながら基本知識がゴッソリ欠けている私にとっては*1、高校時代の世界史の教科書を捨てずに取って置いて良かった!!と心底感じさせてくれた一冊である。読んでる途中でも幾度となく、物語の背景知識を求めて、世界史の教科書やら年表やらのお世話になり申した。
如何せん、からっきし歴史に疎いもので、ならず者らがひしめくローマの暗黒社会を巧みに渡る姿は武闘派ながら飄々として、爽やかですらある美丈夫、ティトゥス・アンニウス・ミロちんもてっきり作者の創作した人物だとばかり思っていたが、彼って実在していたのだねー。



青年貴族デキウスの捜査 (ミステリアス・プレス文庫)

青年貴族デキウスの捜査 (ミステリアス・プレス文庫)

目下2作目に取り掛かったところで、えー、ミトリダテス王が死んだということは、時はBC63つーことか。前作から7年後のローマにおける謀略の顛末、という感じになるみたい。ミロも再び出てくるようだし、今度も楽しめそうだ。

*1:セカイシ、ナゼカクモミゴトニ忘レテイルノダロウ…