これはとりもなおさず気になっている証拠だ


ル=グウィンジブリの映画『ゲド戦記』の感想を述べている。
結構キビシい視線もちらりと覗かせているのはル=グウィンっぽい。

Ursula K. Le Guin: Gedo Senki, a First Response

ふーん、そうか。やっぱ駿氏が監督するのでない、と知って落胆があった模様。
作品自体についても、吾朗氏がブログで書いたような、単純に好意的な感想を持ったわけではない。
彼女の感想に漂う全体的なトーンから窺えるのは、今のところ、彼女はけしてこの映画を好んではいないのだな、ということだ。
「私にはそう思われた」と一応但し書きされてはいるものの、なんだか支離滅裂な物語になってしまっている、とも書いてある。原作を念頭に置いて見ていたためにアレレ?となってしまったらしい。作者の手を離れ、映画として新たに創造された作品であるとはいえ、彼女としては、もちょっと原作に忠実な部分があってもいいんじゃないのか、との気持ちがあるようだ。だって最初に世に出て40年経つ物語を原作として製作されたわけだし、タイトルもそのまま使われているわけだし、と言っている。
アースシーに関する説明が足りず、物語を太く貫くものが欠落しており、個々のモチーフが唐突すぎて齟齬をきたしてる、という類のことはヤフーのユーザーレビューでも指摘されてっけ。あと、命の大切さをセリフで連呼させて説教臭い、とかも言われてたしなあ。

きっと彼女は駿氏に手がけてもらいたかったのだろう。でなけりゃ、もう映画化なんてしてもらわなくて結構、ってとこじゃないのか。

Both the American and the Japanese film-makers treated these books as mere mines for names and a few concepts, taking bits and pieces out of context, and replacing the story/ies with an entirely different plot, lacking in coherence and consistency. I wonder at the disrespect shown not only to the books but to their readers.

あと、私が興味を惹かれたのは、↓このくだり。

I had a pleasant correspondence with Mr Toshio Suzuki of Studio Ghibli. In our correspondence, I urged the unwisdom of radical changes to the story or the characters, since the books are so well known to so many readers, in Japan as elsewhere. In order to have the freedom of imagination he ought to have in making his film, I suggested that Mr Miyazaki might use the period of ten or fifteen years between the first two books: we don't know what Ged was doing in those years, aside from becoming Archmage, and Mr Miyazaki could have him doing anything he liked. (There is no other film maker to whom I would make such a proposition.)


1巻と2巻の間に横たわる年月、誰も知らないその十数年を、駿氏の想像力を駆使して自由に描いてみてはどうか、という提案をル=グウィンはしていたのだった。確かに、この時代のゲドについては詳しく語られていないし、これ、実現していたら…とつい考えてしまうわ。


で、肌の色とか容貌のハナシも出てくる。これについてはやはり彼女は何らかの言及をするのではないか、と思っていたが。
ル=グウィンが言うには、自分にはゲドを含め登場人物らの肌の色は白すぎる、と思われましたが、日本人の目には違って見えるのだ、日本の観客には今回の登場人物らの肌は通常よりも濃い色になっていると受け取られるのだ、と聞いているので、そうであればよいと思っています、とのこと。うーん、私の日本人としての目にも(いや、公式HPとかその他宣伝画像を見ただけだが)、やっぱみんな色白すぎるんでないかい?って具合に映ったけどなー*1。どうにもイメージ違うし。

しかし一度はちゃんと己の目で見てみよう、とは思う。なんだかんだと言いつつ、というよりも、なんだかんだ言ってるのは、私自身がこの映画が気になるからなんだよな。

*1:http://d.hatena.ne.jp/kann/20060719でのコメント欄でもその旨激白、もとい吐露。