狄判事(狄仁傑)のシリーズを読む今日この頃

http://d.hatena.ne.jp/kann/20040709#p2 にて、読んでみたい!と叫んでいたRobert van Gulikの狄(ディー)判事シリーズであるが、先日いくつかを落掌。早川書房のやつのみだけど。
私はミステリにおいては精緻なトリックなんぞは割とどうでもよくて、そこに描かれる人間が何らかの意味で魅力的だと感じられれば満足する。 そうした個人的傾向からすると、狄仁傑ものは間違いなく面白いと言える。狄判事の副官、陶侃(タオガン)、馬栄(マーロン)、喬泰(チャオタイ)の三人衆も良い味を出している。生憎と喬泰(チャオタイ)がメインで活躍する作品は読んでないが。私の好きなのは陶侃(タオガン)、三人の中でもこの人はなんだか気になる人物である。
邦訳がまた見事で、翻訳者の和爾桃子氏の技量が文章の其処此処に窺われる。英語から日本語へ翻訳してるようだが、中国史漢詩はもとより、古代中国の社会、風俗、文化にも明るくないと訳すのは到底無理だろうと思われる作品群を訳出するその手際の妙は、ページを繰るごとにそこはかとなく立ちのぼる。ミステリとしてだけでなく、七世紀後半の中国の風俗についての読み物としても楽しい。中国人が貴人などへ挨拶する際に手を重ね(服の袖に手を通して)頭を垂れる、あのお馴染みの仕草は「拱手一礼」と呼ぶのだということも今まで知らなかった。日本の娼館、遊郭のシステムも中国由来だそうで。
とりあえず以下の四冊を読了。中公文庫や三省堂から出てた分もおいおい手に入れようと思う。

観月の宴 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

観月の宴 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

紅楼の悪夢 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

紅楼の悪夢 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

真珠の首飾り (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

真珠の首飾り (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

雷鳴の夜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

雷鳴の夜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)