Getting high on Tolkien and counterculture

トールキンの『指輪物語』は、まず1950年代にイギリスで出版されたが、同書が爆発的に売れ、ベストセラーとなったのは60年代のアメリカにおいてだった。皮肉なことに、海賊版のペーパーバックかなにかがアメリカで出回ったことがきっかけで売れ始めたんだったと思う、確か。
当時の若者らの支持を得たLOTR人気は、カウンターカルチャーの流れとも無縁ではない。ホビットの生活って、ヒッピーの自然回帰志向とも共通するものがあり、憧憬をそそったらしい。若者の間では「ガンダルフを大統領に!」というスローガンもあったとか無かったとか。もちろん、ベストセラーになったのは、物語それ自体の魅力にも与るところ大だったと思うけど。ほかにも、LOTRが支持された理由については、まあ、ちょっと今は書く気にならないけど、個人的に考えてることがあったりして、LOTRは言うなればヒッピーたちのバイブルと呼んじゃって良いような位置付けだったのでは、と思っている。
学生時代に知り合ったあるフランス人も"Le hobbit"という本を持っていた。これ、『ホビットの冒険』のフランス語版なんだが、『指輪物語』と同じく中つ国を舞台に、ビルボ・バギンズが活躍する物語だ。LOTRに出てくるドワーフの親の世代とか、ガンダルフ、ゴクリも登場するので、昨今のLOTR人気にあやかってそのうち映画化されるかもしれない。
で、このフランス人、若い頃はクリシュナムルティの追っかけをしてたという、ま、どちらかと言えば変わり者に分類されるであろう御仁で、私とは親子といってもいい年齢差があったにも関わらず、親しくしてくれていた。"Le hobbit"は彼の自宅の本棚にあったんだが、最初にこの本が並んでるのを発見した時、あ、トールキン好きなの?と嬉しくなったのを憶えている。
そこで話をトールキンに振ってみたところ、案の定出てきた、60年代武勇伝。年齢的にはカウンターカルチャー世代の中でも最後尾に当たるんだと思うが、17、8歳の頃、ネパールに行き、そこの森の中でトールキンのミドルアースの世界を感じたとか(当然ガンジャをキメてた模様)、毎朝何リットルも水を飲んで、それをまた吐き戻し、体の中を浄化するヨーガ?かなんかを実践してたとかいう話を聞かせてもらい、彼は一見ヒッピーっぽくない人だったから、へえ、そうだったの!って感じで落差があって笑えた。
こういう話を聞くと、いやぁ、カウンターカルチャーの動きはアメリカだけでなく、世界中に拡大してたんだなー、それとともにトールキンも各地でブームになってたんだろうなー、としみじみ感じる。そうそう、映画化される前から欧米人の知人はLOTRを読んでる人が多かったっけ。フロドがいいだの、メリーがいいだの、好きなキャラの話とか皆してたし。LOTRはある程度もう古典として定着してたんだろう。それに今回の映画以前にも、一度映画化されてたはず。

さて、日本でもトールキンカウンターカルチャーの結びついた状況はあったのか、というと。
西荻窪に「ほびっと村」という名前の自然食品などを扱う店がある。以前ちょっと覗いた時にもニューエイジ系の書籍とかあったりして、この名前はきっとトールキンに由来してるんじゃないか、とそれっぽい匂いを感じたりしてたんだけど、今さっきネットで調べてみたらやっぱり。
以下は、ほびっと村ウェブサイトにあった言葉(http://www.nabra.co.jp/al/hobbit/hobbit_mura.htm)。

 爾来、ここはカウンターカルチャーの砦であり、またここに来ればいろんな人に出会える場所だった。時は経ち、古い村びとたちは去り、新しい村びとたちが継いで、今なお意気軒昂、かつ相変わらずゆったりとしたオーガニック・スペースである。

なんだかわからないけど、嬉しくなってきてしまった。
こういう些細なことでも、偶然つながる出来事の連鎖に出会うと、アルコールやドラッグなしでハイな気分になれるっていうのは幸せかもしれない。
実はマリファナを試したこともあるが(一応日本国外で)、どうってことも無かった。私は三半規管が弱いのか、常日頃から地球が揺れてる〜!という浮遊感みたいな感覚がよく生じるんだが(飛行機乗ったり、山登ったりした時は特に。なんかの病気だろうか)、それと大差ない感じで、なんだ、こんなんなら普段でも経験してるよ、って程度だった。やり方がまずかったのかね。ちなみに吸引するより、バングラッシーとかにして直接摂取するほうが穏やかでいいと聞くけど。
いずれにしろ、私はそのためにあえて法を犯す必要もない体質?のようだし、下戸だから飲み代もかかからないし、非常に安上がりに出来てる単純な人間なのだった。ふとしたことで偶然が重なるような場面に立ち会った時の戦慄というか、興奮のほうがずっと心身に効く感じ。