Judge Dee at Work

五色の雲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

五色の雲 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)


短篇集『五色の雲』はこれまで読んできた長編作品とはまた違う余韻を残す。なるほど、ヒューリックは短篇の名手と言われるだけのことはある。
私はアガサ・クリスティも短篇が好きで、クイン氏やパーカー・パインはもちろん、ポアロやマープルも『ヘラクレスの冒険』や『ポアロ登場』、『火曜クラブ』などの短篇の方が断然楽しいと思っているが、今回の狄判事にはそれらに通じるものを感じた。特に気に入ったのは「西沙の柩」と「小宝」の二つ。「西沙の柩」は、読んでいる途中でル=グウィンの『オルシニア国物語』を思い出した。物語のセッティングは全く違うのだけど、『オルシニア国物語』に収められていても違和感なさそうな、陰影漂う好篇。