ところでちょっと検索してみたら、なんだかヤな話が…

ナルニアの続編制作というネタにまつわる騒動は、日本ではどう扱われてたんだか知らないが、英米ではファンの間で喧喧諤諤あった様子で、執筆を誰に依頼するかその選定が難しいとか、ナルニアキリスト教的要素を除去したほうがいいとの出版サイド(ハーパー・コリンズ)の意図があるとか、単なるファンだけでなくキリスト者も巻きこんで一時は喧しくあれこれ言われていた。で、先ほどざくっと検索してみたところ……よくわからんのである。結局のところ続編ってどうなってるんだ。デマだったのか?ご存知の方、おられるかしら。

それよりも、今回ディズニーが手がける映画版ナルニアについてちょっと気になる記事を見つけた。

http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2005/03/06/wnarn06.xml&sSheet=/news/2005/03/06/ixworld.html

なんとディズニーは映画『ライオンと魔女』をさしずめ「子供向けの『パッション』」とでも銘打ちたいのか、とにかくそういう文脈でプロモーション展開しようと画策、検討してるんだとか。でもって事実そのようなプロモーションが目下践行されてるんだと。
『パッション』て、メル・ギブソンのアレだ。映画館でショック死する人まで出たというやつ。私は観てないが、町山さんの紹介を読んでかなりファナティックなおっそろしい、バイアスかかった映画を想像してるんだけど。その『パッション』のお子様向けマイルドバージョンとしてのナルニアって!なにさ、それ!?
ディズニーによってナルニアが映画化される運びとなった当初こそキリスト教的色彩が薄められるのでは、との懸念が取り沙汰されたものの、これは杞憂もいいトコ、反対にディズニーは今や真っ向からクリスチャン層ど真ん中狙い撃ち、という方針を取っているようだ。まさに宗旨変え、といっても、彼らの意図はなるべく多くの観客を取りこみたいという点で一貫してるんだろうが、キリスト教臭を抑え、クリスチャン以外にも抵抗無く受け入れられるように、ってことで進めるよりも、ことさら宗教色を強め、教会やキリスト教関連組織からのお墨付きを受けることで世のクリスチャンを軒並み映画館へ向かわせるほうが手っ取り早くてオイシイじゃん、ってな感じなんだろうか。こうした戦略はハリウッドの常識らしいが、まるで選挙戦。手堅く相当の動員数が見込めるってか。
既にディズニーは『パッション』の宣伝を請け負ったPR会社(Motive Marketing)を雇い、着々と準備を進めており、ディズニー幹部とキリスト教団体とのミーティングを設けたり、それらの団体の指導者らに映画『ライオンと魔女』から抜粋したフィルムを観せて意見を求めたりしてるそうだ。
私は宗教と聞いてたちどころにアレルギー反応を示すような人間ではない(つもり)。でもなー、当該記事の最後にウィリアム・ニコルソン(ルイスとジョイの出会いと別れを描いた舞台『永遠の愛に生きて』の脚本を書いた。これは映画にもなってる)が語っているように、こういうのはルイス自身も望んでないだろうし、あざといというか姑息で不穏なやり口のように思う。ルイスは神学者であり、ナルニアにも神学的アレゴリーを意識して投影していたとはいえ、英国には豊潤な児童文学の蓄積があるのだし、彼はなによりもまず親子代々読み継がれていくような、子供が(そして大人も)楽しめる滋養あふれる物語を書きたかったのじゃないか。ナルニアが読んで楽しいワクワクする物語なのは事実であって、神学的寓意をそこに見るも見ないも各個人に任せておけばいい。キリスト教的要素が窺えるのと同じくらい、それはまたキリスト教的要素から自由な作品でもあるのだから。おそらくこうした意見がファンの間でも多数を占めてるのでは、とは思うんだけど、なんにせよ、キリスト教プロパガンダ映画に還元されてしまいかねない、ヘンテコリンなプロモーションとかは勘弁して欲しいわ。
今回の映画で共同プロデューサーとしても名を連ねているルイスの息子ダグラスは自身も敬虔なクリスチャンなのか、キリスト教施設を運営しているらしい。で、この映画の脚本に満足しているとのこと。数年前、ナルニア続編制作間近かと騒がれた際、どういう記事を読んでのことだったか忘れたが、このルイスの息子にはそこはかとなくいかがわしさを感じたものだ。それは前回の日記でも触れた通りで、思いっきり私の偏見であるのを承知で言うと、今回の映画プロモーションの件でもやっぱりコイツ胡散臭いのー、という印象が。
いやはや、知ることはバイアスを外すことである、と思う一方で、バイアスをかけることにもなる、とあらためて嘆息。クリスチャンでない、フツーの日本の子供だった私はただただ面白いお話だなあ、と思ってナルニアを読んでいたんだが、あの頃が懐かしい。

などと書き連ねていながら、その実私はさほどナルニアのファンでもなかったりするんだが、ま、そのへんのことはさておき、件の記事を読んでなんだかヤな感じがするー!と慄いたのであった。