クリスティとマローワン、そしてアラブ

アガサ・クリスティの『杉の柩』というミステリーがある。
恋人の心変わりに悩んでいた主人公の女性が、彼の心変わりの原因となった女性を殺害したのでは、という嫌疑をかけられ…ってな話なんだが、登場人物らにクリスティ自身の最初の夫と2番目の夫に対する思いが投影されているように感じる。
というようなことを書いてみたかったんだけど、ちょっと今『杉の柩』が手許になくて、肝心の登場人物の名前が思い出せない。記憶違いしてることとかも結構ありそうなんで、いずれその内にということで、今日はお茶を濁しておく。
マローワンとは、クリスティの再婚相手で考古学教授だったマックス・マローワンのこと。そういえば確かマローワン夫妻は現在のイラクとかにも発掘調査に行ってたはずだし、クリスティの作品にはレナード・ウーリー教授への献辞があるし、「アラビアのロレンス」として知られるT・E・ロレンスとも知己だったんじゃないかと思ってるんだが。
で、ロレンスとくれば、英仏の利権・統治争いのすったもんだの末、ハーシム家のファイサルが初代イラク王に就いたんだっけなー、ということをどうしても連想してしまう。現在の状況ではなおさらだ。サダム・フセインとブッシュの衝突以前から、もうずっと彼の地はアラブ人の手から離れたところで政治的駆け引きの対象として扱われてきたんだわ、とあらためて嘆息してしまう。パレスチナイスラエルの問題も結局、ヨーロッパ列強の思惑が引き金になってるし。ああ、もう、どうしてこんなことになってしまったのか。もとをただせば英仏の責任は重い。そして今や日本もこの混乱した凄惨な状況に、ブッシュ側の援軍として加わってしまっているわけだ。ロレンスと共にアラブの叛乱に参加した人々は、このような大いなる不正と搾取の継続を見るために立ち上がったんじゃなかろうに。